1.はじめに
メンテナンス対応型の消雪パイプブロック(通称:メンテナンス・ブロック)の性能をまとめた技術基準書の紹介ページです。
このたび、1本ずつ順番に接続していく従来のプレキャスト消雪パイプブロックの考え方を大幅に見直し、『施工性・安全性・維持管理性が向上した』新型プレキャスト消雪パイプブロックを開発しました。
開発にあたっては、ブロック接続部の強度試験やスライド式継手の曲げ水圧試験等を実施し、実用に耐えうる性能を充分に有していることを確認しております。
本技術資料では、消雪施設の設計や現場施工に役立てて頂くため、新型プレキャスト消雪パイプブロックの特長と性能、施工上の留意点等について説明します。
- メンテナンス・ブロックの接続機構
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- メンテナンスブロックの技術基準
- 1.はじめに
- 2.特徴
- 3.仕様
- 4.特性
- 技術基準書の改訂履歴
- H20.7.1 初版作成
- H20.7.11第1回改訂
- H20.9.1 第2回改訂
- H28.5.20第3回改訂
- R3.10.28第4回改訂
- 技術基準書(PDF版)
2.特徴
メンテナンス型消雪パイプブロックの特徴をまとめました。
従来型ブロックは、管端が躯体から突き出している“凸部”と、躯体端面に収まっている受け口の“凹部”が一対になっており、順番に接続していました。
新型ブロックでは、ブロックの躯体端部の一部を切り欠いて継手を接続する空間をつくり、ブロック据付後に一方の躯体に格納していた継手をスライドさせて管端同士を接続する方式をとっています。
その結果、施工性、維持管理性、安全性を向上させることができました。
表1 従来型ブロックとメンテナンス対応型の比較
(1)施工性の向上
従来型ブロックの接続の際は、重量物であるコンクリート躯体を、クレーンで吊りながら背面からバックホウや数人で押したりして接続していたのが現状です。
新型ブロックでは、縁石ブロックの様に比較的簡単に据え付けることができ、さらにブロック躯体自体をスライドさせる動作が不要となるため、重機による作業や据付に要する人工が軽減されて施工性が向上します。
(2)安全性の向上
従来型ブロックは、バックホウ等により背面から押しながらスライドさせて接続しているのが現状ですが、その際注意を要するのは”スライドによる手や指のはさまれ事故”です。
新型ブロックでは、ブロック躯体自体をスライドさせることが無いため、据付作業のる安全性が向上します。
(3)維持管理性の向上
従来型ブロックは、一対になった“凸部”と“凹部”を順番に連続的に接続するため、不具合が生じた場合に1本のブロックを簡単に取り出すことができません。また、取り出した箇所に定尺のブロックを挿入することもできません。新型ブロックでは、継手を格納して垂直据付を行うため、1本だけの交換が可能となります。容易に取り出せるのでブロックの再利用も可能です。
また、既設の修繕の際に利用した場合、コンクリート打設範囲を最小限にできるメリットもあります。まさにこれからの維持・修繕の時代に即した形式となっています。
図1 据付方法の比較
3.仕様
メンテナンス型消雪パイプブロックの主な仕様を 表2と図2にまとめました。
表2 消雪パイプブロック(メンテナンス対応型)の仕様
本体 | |
寸法 | 65φ〜100φ:標準品L=5500 350H×(上面150W・下面350W) 125φ〜150φ:標準品L=5500 450H×(上面150W・下面350W) |
耐水圧 | 0.4[MPa] |
許容曲げ据付角度 | 3.0[°] |
設計輪荷重 | 50[kN](車道) |
コンクリート 設計基準強度 | 40[N/mm2] |
使用鉄筋 | SD295 D10〜D13 |
散水管 (樹脂管) | |
材質 | VP(硬質ポリ塩化ビニル管) |
管径 | 65φ〜150φ |
枝管接続方式 | ゴム製枝管継手接合 |
スリーブ ジョイント (管継手) | |
接続方式 | スライド接続 |
寸法 | L=120[mm]、 65A( 65φ)〜100A(100φ) L=150[mm]、125A(125φ)〜150A(150φ) |
材質 | EPDMゴム |
図2 消雪パイプブロック(メンテナンス対応型)の製品図
4.特性
メンテナンスブロックの特性をまとめました。
(1)ブロック接続部の強度(接続部曲げ破壊試験)
メンテナンス対応型ブロックは端部に継ぎ手を接続するための空間を設けるため、強度不足が懸念されます。
そこで、接続部に曲げ破壊試験を行い“ひび割れ荷重”を確認しました。
支持力がある路盤上に、試験対象の接続部の延長方向両側にブロックが連続して設置されている状況を想定しました。2本の供試体の端面が密着して離れないようにするため、図3のようにパイプ内に充分な引張強度を有するPC鋼棒を通し、両方の供試体の外側端部にt=20mmの鋼板を設置して、載荷時にブロックが開かないように固定しました。また、供試体はプレートタンパにて充分に締め固めを行った上に設置しました。
また、実際の施工では、ブロックの両脇に空練りモルタルを充填するため、接続部にも同様に空練りモルタルが充填されます。曲げ破壊試験では、接続部の空間に空練りモルタルを充填するものと充填しないものの両方の試験を行いました。
図2 接続部の強度試験図 | 図3 接続部の強度試験状況 |
結果、消雪パイプ設計輪荷重70[kN]に対して、モルタル未充填の場合でもひび割れ荷重が断面H350で200[kN]、断面H450で252[kN]を示し、十分な強度があることを確認しました。
現場据付時は接続部に間詰用モルタルを充填するため、さらに強度が増し強度不足になることはありません。
表3 接続部曲げ破壊試験結果
断面 H350 試験日 H20.07.17
供試体切欠部処理 | ひび割発生荷重 ※1 | 破壊荷重 ※2 | ||
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荷重(kN) | 屈曲角(°) | 荷重(kN) | 屈曲角(°) | |
未処理 | 200 | - - - | 385 | (5.30) |
モルタル充填 | 200 | - - - | 400 | 3.17 |
断面 H450 試験日 H25.10.31
供試体切欠部処理 | ひび割発生荷重 ※1 | 破壊荷重 ※2 | ||
---|---|---|---|---|
荷重カ(kN) | 屈曲角(°) | 荷重(kN) | 屈曲角(°) | |
未処理 | 252 | 0.40 | 360 | 0.4 |
モルタル充填 | 480 | 0.40 | 測定不能 ※3 | - - - |
※1)目視確認による微細クラック発生時をひび割れ時とする。
※2)躯体コンクリート部のクラックが貫通した状態を破壊時とする。
但し、(カッコ)内の屈曲角は参考値
※3)試験機の最大性能が500kNで、490kNまで載荷を行ったが破壊に
至らなかったため、モルタル充填時の破壊荷重は測定不能とした。
(2)スライド式継手の耐水圧
メンテナンス対応型消雪パイプブロックの施工性向上のため、新たに“スライド式継手”を開発しました。
消雪パイプブロックの管材料には、0.3[MPa]の耐水圧が求められます。
そこで、継手に屈曲を与えながら水圧試験を掛ける、“曲げ水圧試験”を行いました。
結果、試験時曲げ角度5[°]時に0.6[MPa]の水圧を掛けた場合においてもシール部から漏水しないことを確認しました。
図5 耐水圧試験装置全景 | 図6 曲げ状況 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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表4 スライド式継手水圧試験結果
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図7 接続部拡大 |
(3)ゴム製枝管継手の機能(樹脂管の場合)
プレキャスト散水ブロックのメーンパイプにVP(硬質塩化ビニル管)を採用する場合、枝管接続は塩ビ溶接もしくはネジ込みで行われています。しかし、路面上の車両の輪荷重が金属製のノズルを介し直接枝管接続に加わります。また、樹脂材はコンクリートと線膨張率が異なるため、塩化ビニルとコンクリートの接触面は付着せず別々に動くことで枝管接続部にせん断力が働きます。
そこで今回、ベースとなるVPに、柔軟性に富み荷重や振動、熱応力からの破損を防ぐゴム製枝管ジョイントを採用しました。
ゴム製枝管ジョイントの水密性については、工場において管材単体で水圧試験を行って漏洩が無いことを確認しています。
図8 ゴム製枝管継手のVP管接続状況 | 図9 ゴム製枝管継手の水圧試験状況 |
(4)総合曲げ耐水圧
システムの製品化にあたり、現場の使用状況を見据えた上での総合曲げ水圧試験を実施しました。メーンパイプにVPを使用して、ゴム製枝管継手にてノズルを取り付け、スライド式継手によりブロック同士を接続した状態で曲げ角度を与えて水圧を掛けて圧力ゲージ読みや接続部、ノズル脇からの漏れ等を観察します。
結果、試験時曲げ角度5.0[°]で消雪パイプに求められる水圧(0.3[MPa])の1.5倍にあたる0.45[MPa]の水圧を掛け、60分間の試験を行い変化がありませんでした。したがって消雪パイプとして充分な機能を有していることが確認できます。
図10 総合曲げ水圧試験状況全景 | 図11 接続部屈曲状況(曲げ角度5[°]) |
図12 継手接続状況 | 図13 圧力ゲージ |